第29章 鬼が哭いた日 \❤︎/
『やめろ………やめてくれ……頼む!!!』
『………』
『やめろ銀時ッ………』
『…………っ』
『やめてくれええええええ!!!!!!!!!』
「………ッ!!!!!!」
気がつくと、そこはまだ真っ暗な世界だった。
数秒かかってやっと、自分が夢にうなされて飛び起きたことを理解した。
自分でも気持ち悪くなるほどの汗と動悸で、呼吸は荒く息をすることすらままならない。
なんとか体を起こして手を見ると、手は震えていて恐怖を感じた。
あたりを見渡すと、まだ夜明け前だろうか。月明かりが窓から見えるだけで、ほとんど真っ暗な世界だ。
寝間着は着ておらず、上半身裸の状態なのに大量の汗が背中から流れた。
隣を見るとそこには静かに寝息をたてている一糸纏わぬ愛しい女の姿があって、やっと今が現実なのだと理解した。
なんてリアルで残酷な夢を見てしまったのだろうか。
ズキズキと傷が疼く気がして、高杉は左目に手を当てた。
夢で見た光景は、まさにあの日の現実そのものだった。
どんなに忘れたくても忘れられない、忘れちゃいけない記憶。
あの日から自分の弱さを痛いほど思い知って、そしてアイツに苦しいほど憎しみを抱き続けてきた。
あの記憶さえ忘れられたら、自分を殺すことができたらどんなに楽だろうか。
あの日から全てが変わり、あの日から俺は………
脳裏に焼き付いて離れない現実に、高杉は拳を握りしめて嗚咽を漏らした。