第4章 コトバの紡ぎ方
凛は力強くそう言うと、高杉とちょうど同じくらいの目線の神威を真っ直ぐに見て言った。
「わたしは、自分に自信がありません。でも、晋助様が大好きです。…だから、っ」
なぜだか涙が零れ落ちそうになるのを必死に堪えて、凛は続けた。
「大切だし、大好きだしっ…側にいさせていただけるだけで幸せなんです。ずっと一緒にいたいと思える人なんです。……だからっ…いつか、神威さんにも認めてもらえるように頑張りますっ…!」
「………」
霞む視界で前を見ると、そこには笑っていない神威の顔があった。
こんな顔を見たのは初めてだったが、何故だかその顔に恐怖は感じなくて、反対に安心した気持ちにすらさせられた。
「ふーん…」
「…ごめんな、さい」
目尻に溜まった涙を拭くと、神威はいつもの笑顔に戻っていた。
「面白いね、キミ。何で晋助がキミに惚れたのか、少し分かった気がするよ。」
「…え?」
「最後に一つ、伝言頼むよ。晋助に『俺は狙ってないから安心して』って伝えといて」
「わっわかりました!」
すると神威は艦内に向かって歩き出した。
少し怖いイメージを持っていた阿伏兎と神威だったが、それが今日変わった気がした。
去っていく神威の背に頭を下げると、神威は一度立ち止まって振り向きざま
「俺は弱いヤツには興味がないからね。また今度話そう。…白石凛サン。」
それだけを残して艦の中へと消えていった。
そう言った神威の顔は、なんだかいつもより優しく見えた。