第4章 コトバの紡ぎ方
いつも貼り付けたような笑顔からは、たまに恐怖さえ感じる。
なんでこの人は、晋助様と一緒にいるんだろう。
そう思った。
「…で?伝えたいことはそれだけ?」
「…あ!はい!…あの、」
「なに?」
「晋助様とお話し中だったのに申し訳ありませんでした」
「いいよ、別に。つまらない世間話をしてただけだからね」
慌てて返事をすると、神威はまた笑顔で言った。
「キミが晋助の、ね。」
「……?」
「なんで晋助はキミを選んだんだろうね」
「え…?」
今度は真剣な眼差しで見つめられながらそう言われ、目を逸らすことができなかった。
" なぜわたしを選んだか。"
そんなの、わたしにはわかるはずがない。
「俺にはその理由がわからない。まぁ、あの晋助のことだからキミに惹きつけられる魅力か何かがあるんだろうけどね」
「………」
確かに、自分には何の魅力もない。
特別美人でもなければ人には絶対に負けないと言い切れる特技も実力もない。
だからこそ神威の言葉は凛に重くのしかかった。
「あれ、黙っちゃったね。ごめんね、そんなつもりじゃなかったんだ。ただ晋助が惚れた女がどういう人なのか知りたかっただけなんだよ。だから泣かないで」
たまに考えさせられることがあった。
わたしは此処にいていいのかと。
晋助様のお側にいること自体、間違っているのではないかと。
そう思っていながらも、でもいつも出てくる答えはやはり一つだけだった。
『晋助様がわたしを望んでくれるのなら、わたしはいつまでも晋助様の隣に居続ける。』
「…あれ、ほんとに泣いちゃった?泣かせるつもりなんてなかったんだよ」
「………泣いて、ません」
「あり?」
「泣いてなんかいません。」