第4章 コトバの紡ぎ方
と、いうことで今度は阿伏兎に言われた通り神威を探しにやってきた。
今日一日中ずっと艦内をうろうろとしていたが、一回も神威を見かけることがなかった。
どこにいるんだろう。この艦の中にいるのかな。
そんなことが頭をよぎる。
そういえば、今日はまだ一回も外に出ていない。
もしかしたら甲板にいるのかもしれない。
そう思って、凛はそのまま甲板へと向かった。
艦内から甲板に出ると、そこには思った通り神威……と高杉の姿があった。
どうしよう、二人でお話し中なら話しかけない方がいいかな。
けれど阿伏兎さんからの伝言だし…
そう考えていると、
「凛」
低い声で名前を呼ばれた。
驚いて声のする方を見ると、自分の存在に気がついているのか高杉と神威がこちらを見ていた。
「どうした、何か用か?」
「えっと…!」
神威に伝言を伝えるために、凛は二人のもとへ駆け寄った。
「お話し中申し訳ありません。神威さんに、阿伏兎さんから伝言が…」
「阿伏兎から伝言?」
「…なら、俺はお暇するかね」
神威の横で座りながら煙管を吸っていた高杉は、凛の言葉を聞くと煙を吐き出してから立ち上がった。
「いえ!すぐ済みますので!」
「先に部屋に戻るぜ」
「はーい」
凛の言葉も聞かないまま、高杉は艦の中へと消えていった。
「で?阿伏兎からの伝言てなんなの?」
「えっと…早くお仕事をしてください、と…」
「ああ…」
伝えると、神威は実に不機嫌そうな顔をした。
サーモンピンクのような長い髪は後ろで三つ編みに結ってあって、頭の上ではまた髪がアンテナのようにぴょこぴょこと動いていた。