第23章 もっと熱く、火照ってとろけて \❤︎/
「…?」
「ではまた後ほどお茶をお持ちいたしますのでお待ちくださいね」
笑顔で女将は部屋を出ていくと、凛は言った。
「他のお客さんいないなんてとてもラッキーですね。お風呂入り放題ですよ!」
「貸切にしたんだ。他の客いねえ方が楽しめんだろ」
「えええっ?」
「悪いか?」
「いや、悪いわけではありません!ですが!」
まさかこの人は温泉旅行に行くだけで旅館を貸し切るような人だったとは。
色々な面で怖くなって、凛は何も言わずに高杉の向かい側に腰を下ろした。
しばらくすると中居さんがお茶を持ってきてくれて、凛は熱いお茶を一口すすると言った。
「それにしても、こんな豪華な旅館に泊まれるなんて…その上貸切だし、本当にありがとうございます」
「ああ。…昔、俺がガキの頃よくここに来てたんだ。だからお前も連れてきてやろうと思ってな」
「温泉に来たのなんてすごく久しぶりなのでとっても嬉しいです!」
本当に嬉しいのか、凛は部屋を見渡して目をキラキラとさせた。
「あ、早速足湯入ってもいいですか!?」
「自由に入れ」
「やったー!」
足袋を脱いで、真っ白な庭を眺めながら早速足湯につかる。
じんわりとあったかくて心が休まるようだ。
「晋助様もどうですか?あったかくて気持ちいいですよ」
「…俺は今はいい」
そう言いながら高杉は凛の隣に座って懐から煙管を取り出すと、火をつけて煙を吹かす。
そして二人並んでゆっくりと真っ白な庭を眺めた。
「…晋助様?」
「なんだ」
「もう少ししたらどこかお出かけしませんか?」
「ああ。行きたいところ考えとけ」
「はいっ、準備します!」
凛は咄嗟に立ち上がると、近くにおいてあったタオルで濡れた足を拭いた。