第17章 Good for you \❤︎/
艦を出ると、そこはちょうど見覚えのある江戸の漁港だった。
振り返って自分が乗っていた艦を見上げると、思えば戦艦とも言える巨大な艦が江戸の港に止まっているのは異様な光景だ。
「行くぞ」
「あっ…」
高杉に手を引かれて歩き出す。
凛は高杉の手をぎゅっとにぎり返した。
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夜が更けた頃。
空を見上げれば大きな月が顔を出していた。
大満足で江戸の港に止められた艦に戻ってくると、自分の着物の下のことを思い出して急に恥ずかしさでいっぱいになった。
緊張で何も話せず、ただ無言で高杉の後についていく。
このあとのことを考えると、心臓が破裂してしまいそうだ。
そんなことを考えている間に気付けばそこは高杉の部屋の前で、扉を開けて中に入る。
いきなりすぎて、まだ心の準備ができていない。
何もできずにあたふたしていると、高杉は息を吐きながら床に座り近くに置いてあった高級な酒瓶、そして徳利とお猪口を取り出した。
「少しでいい。酌してくれ」
「あっ、はいっ」
いつも通り高杉の隣に座って酒瓶から徳利へと酒を移す。さらに徳利からお猪口に酒を注げば、高杉は一気にそれを飲み干した。
「お前も飲むか?」
「…わたしは…」
「気持ちよくなれるぜ」
酒はそんなに得意ではない。
それゆえ飲むとすぐにアルコールが体にまわって顔も体も熱くなってしまう。
だが、少しだけなら大丈夫だろう。
酒の力を借りれば恥ずかしさもなくなって、さらに少し大胆になれるかもしれない。
そう思って、凛は高杉からお猪口を受け取った。
「では、少しだけ…」
今度は高杉が徳利を持って凛のお猪口へと酒を注げば、凛は注がれた酒を一気に飲み干した。
「いい飲みっぷりじゃねェか」
「ありがとう、ございます…」
やはり、何度飲んでもこの味は苦手だ。