第15章 白昼夢
「……っ!!!」
夢を見ていた。
それはとても苦しくて辛い夢。
うなされて目を覚ますと、そこはいつも通り艦の中の自室だった。
とてもリアルで怖い夢。
気付けば体は大量の汗と涙でいっぱいだった。
夢の中でギュッと心臓を掴まれたかのように胸が苦しくて、とめどなく涙が溢れてきた。
なんて夢を見てしまったのだろう。
凛は重い頭のまま体を起こすと、そこにはいつもと変わらない風景が。
少し安心しながらなんとなく覚えている夢を思い出すと、なんだかとてつもなく不安にかられて、凛はそのまま自室を飛び出した。
ただ夢中で駆け出して、あの人の元へと向かう。
だがあの人の部屋を覗いても、大部屋を覗いてもどこにもいない。
途中見かけた万斉やまた子達に聞いても居場所が分からなかった。
怖くなって、涙が零れそうになるとふと一箇所思い当たるところがあった。
艦の甲板。
あの人はあそこで一人煙管を吹かすことが好きだった。
走って甲板を出ると、そこには案の定、あの人の姿があった。
「…晋助様っ!」
何をするでもない、ただそこに立って空を眺めているようだった。
「…」
「晋助様…よかった…」
ずっと探していた、高杉の姿を見つけて凛は安堵の表情を浮かべた。不意に、また涙が込み上げてくる。
「どうした?」
「あ…いえ…晋助様の姿が見当たらなかったので…」
「…泣いてんのか」
「い、いえ…なんでもありません。ただ晋助様の姿が見当たらないので少し不安になって…」
目の涙を拭うと、凛はゆっくりと顔を上げた。
そこにはいつもとなんら変わりない大好きな人の姿があった。