第2章 夢の終わり
私は山の上の大蛇を一瞥して授業に意識を戻した。
私はポニーテールを小刻みに揺らしたりして、ただただ30分近く悩んでいた。
授業計画を最初から無視して自分の趣味を押し付ける教師、許せるはずなんかない。
でも高校生活スタートの今、クラスで目立つのは得策じゃない。
(シュウコなんて名前負けじゃない。)
あれは中学2年生の夏だった。何かにつけ中だるみと揶揄されるその学年において、私は私自身に怠惰を許さなかった。
勉強に陸上、ひいては私生活に至るまで、自分自身に甘えを許す気などなかったのだ。
そしてそれは、派生し飛び火し、周りを巻き込む迄に膨張し、その仇名で呼ばれるに至って初めて、余計なお世話だということに気がついた。
きっと私がいる場所といない場所とでは、皆の表情も言葉も、なんて考えると悲しいより先に虚しくなり、そして私はそのあからさまな仇名とともに、他人何かを求めるのをやめた。
そんな2年前の思い出を夢想し、自分で自分に毒づいて頬杖をついたその時だった。
「冬人!眠いのは結構だが、教科書はどうした?」
荒木が声を上げ、目の前の席の仁連木冬人くんを名指しした。
そして数分のやり取りで、彼は私の予想を上回り、荒木を説き伏せてしまったのだった。
私だって文学に興味はあるし、太宰治を読んだことがある。だからって句読点の位置や数まで記憶していない。文法上違和感さえあれば気づけるかもしれないが、ここまでくると小説家の気持ち次第となってしまう。
彼が名指しされたあと、きっと彼は降伏はしない。そう思った。彼が纏う空気が殺気のようなものに変わったからだ。
彼はくしゃくしゃの少し長い髪をして、中肉中背。クラスに中学時代の友達がいないのか、誰かと話す姿を見たことがなかった。
2年前の私ならば、彼にこう言ってしまうだろう。
「なぜ力があるのに努力を怠るの?それは持てるものの義務に反するわ。」