第8章 「 かのじょ 」 二口堅治
「はぁ、なんか俺、真由には一生敵わない気がしてきた。」
「??どういう意味ですか?」
「いや、わかんなくていいわ。」
「???」
首をかしげ、不思議そうな顔をしている。
その顔をじっと見つめると、真由は照れて目を逸らした。
あー、かわいい。
「あ、髪にゴミついてる。」
「え?どこですか?」
真由は自分の髪を触る。
「そっちじゃない。反対。あー。もっと上。」
「え?え?取れました?」
上目づかいでこちらを見る真由の唇に、俺の唇を押しあてる。
触れるだけのキス。
唇を離すと目が点になっている真由の顔が目に入った。
思わず、その表情に笑ってしまう。