第2章 新学期と新生活と入部
蛍との久しぶりの再会に嬉しく思う暇もなく私は先生と体育館へ向かった。
「すまんな。誰かと話していたみたいだけど。この間連絡した件の最終確認をしないといけないと思ってね。」
申し訳なさそうに話しかけてくるこの人は担任の先生で、私は一週間前に入学式の新入生代表挨拶を任命されていた。
元来人前に立つのは好きではないんだけど。
指名されちゃったんだからしょうがないよね。
『大丈夫です。代表挨拶書いてきたんで見てもらっていいですか?』
「おう。すまんな。」
この先生は〝すまんな”が口癖のようだ。そう冷静に分析しなが代表挨拶を眺めている先生の横を並んで歩く。
途中すれ違う学生の視線を感じる。
視線を感じながらまた中学の時みたいに窮屈な生活が待っているのかと位考えが頭をよぎる。
告白に対して「ごめんなさい」を言う度に少しづつ心が壊れそうになったあの日々。
そんな時はあのキーホルダーを握りしめながらなんとか乗り切れた。
……って。また蛍の事考えてる!!いけない!いけない!集中!
そうやって百面相していると代表挨拶を読み終わった先生に話しかけれられた。
「うん。完璧だね。さすが。ところで親御さんは大丈夫かい?後から来るのか?」
『大丈夫です。親は海外出張中です。中学からずっと一人暮らしなんです。』
そう言い終えると同時に体育館に着いた。
「そうか。じゃあ大丈夫だな。ちょっと早いけど挨拶の為の練習しとくか。立ち位置とか見ておきたいだろ?」
『助かります!結構心配で。』
そう言って体育館のドアを開けると「あぶない!!!」という言葉と共にすごい勢いのバレーボールが飛んできた。
咄嗟に先生の前に出てアンダーでレシーブをした。
そのボールは弧を描いて吸い込まれるようにセッターの位置へ戻っていた。
体育館は途端に静寂に包まれる。
「すっげーーー!」
坊主の人の大きな声と共にバレー部であろう先輩3人がこちらに駆け寄ってきた。
澤「すみません!大丈夫でしたか?もうそんな時間なんですね。すぐに片付けます!」
菅「やばい!おい!田中!固まってないで早く片付けるぞ!」
バレー部の方である2人に声を掛けられても全く動かず石化している坊主さんはこの泣きボクロさんの言い方から〝田中”さんなのだろう。
彼はこちらを見て動かない。