第1章 入学と出会いとあの日
ここは烏野高校。
そしてここから私の新しい生活が始まる。
涙、涙の東京の友達との別れから1ヶ月。
小学生の夏休みぶりに来た宮城はとても寒くて、でもなんだかほんわかして心がワクワクする。
入学式の2時間前に高校に到着してしまい本当に小学生の遠足みたいだ。
人の気配はなくてこの場所は私だけの秘密の場所みたい。
雲一つない青空の下、胸いっぱいに澄んだ空気を吸い込み、入学式と書かれた看板が置かれた校門をくぐる前に一礼する。
そして…
『よろしくお願いしまぁぁぁす!!』
大きな声で力いっぱい叫んだ。
これからの高校生活で良い出会いがいっぱいありますようにと願いを込めて。
「え…何してんの?変人?」
途端に誰も居るはずのない背後から低い男の人の声がした。
その瞬間背中に冷や汗が伝う。
ゆっくりと振り返るとそこには長身の男の人が立っていた。
『え゛……えええええええええええ!!!!!!!!!』
聞かれたきかれたキカレタ…どうしよう…変な子って思われたよね。
こんな時間に人来ないと思ったのに恥ずかしい!!
せっかくの高校生活が〝変な子”扱いに!!!
どうしようどうしようどうしよう…
この人デッカイし絶対先輩だよね…
噂とか回っちゃうのかなぁ…!
あいつ変人だぜ。的な。
あわあわと1人焦っている私に最初は怪訝そうな顔をしていたが、徐々に驚きの表情に変わっていった。
あぁ、驚愕ってこういう顔を言うんだ…
とどこか他人事のように、というか現実逃避をし始めた私を現実に引き戻す言葉が降ってきた。
「、久しぶり。」
彼の口からは私の名前。
この人そう言えば見たことあるかも…
短くてクリーム色の髪、メガネの奥に光る鋭い目つき、刻まれる眉間の皺、そしてヘッドフォン…
どこかで…?でも思い出せない。
『あの…すみませんがどなたでしょうか…。』
絞り出すように彼の名を聞くと彼の眉間の皺は更に深く刻まれた。
「アンタはいつもそうだったね。兄さんにしか興味がないってか。じゃあね〝”。」
言い放った彼の悲しそうな顔で記憶が蘇る。
あの暑い夏の日のことを…。