第2章 初出勤
夕暮れに包まれた河川敷を辿っていくと、
約束していた場所に、その屋台はあった。「ハイブリットおでん」
今日から私の職場だ。
「おーい、早いな!初出勤、おつかれ!」
ニシシ、と手を振られる。
*
「基本は、店に立ってくれてるだけでいいぜ。大した客もこねぇしな!
あ、でもしばらくしたら仕込みも覚えてもらいてぇな!」
「は、はい!精一杯がんばります!」
「はは、いいんだよ!気ぃ抜いてな!」
そういって雇い主であるチビ太さんは、手際よく具材を仕込んでいく。
その神がかった動きからは、おでんへの無常の愛を感じられる。
これが、あの絶品おでんを生み出す技なのか……。
などと感心していると、
「やばい!あいつが来たぞ!」とチビ太さんがおののいていた。
みると、仕込みは既に完了していたようだ。出汁のいい香りがあたりに立ち込める。
いつの間に……。
「あ、あいつって……?」
「あいつだ、あいつ。松野家の長男、赤いパーカーのあの悪魔!
よりによって初日にあいつに当たるとは……何事もねぇといいんだが……。」
あのチビ太さんが尋常じゃなく焦ってるなんて……。
チビ太さんが指差す方向をみると、そこには誰もいなかった。