第3章 失念×懸念
「・・・ッ!」
ヒロはその目の前の部屋に思わず息を飲んだ。
子供部屋。
小さなベッドにたくさんのおもちゃ。
たくさんのぬいぐるみ。
前にもどこかで見たことがあった。
好きだったはずなのに、ひどく嫌っていた部屋。
矛盾しているが、確かにそう思っていた。
「・・・・・・」
心臓の音がやけにうるさい。
ヒロは聞こえないようにと、ギュッと服を強く掴んだ。
「ヒロ」
「!」
ふわり、と背中が暖かくなる。
気付けばクロロが後ろからヒロを包み込むように抱き締めていた。
「平気か?」
顔を覗き込みながらクロロが問う。
正直訳のわからない感情が込み上げているヒロは、今にも泣き出したい気持ちになっていたが、そこは普段通りの自分を装う。
「平気。少し立ち眩みがしただけ」
「・・・ならいいが」
強がっていることはおそらくバレバレなのだろう。
だがクロロはそれ以上のことは聞かずに、部屋の奥へと踏み入っていく。
しばらく室内を散策すると、奥に隠し扉を見つけ、その中のひとつを手に取った。
「これが、目的の物だ。案外楽に手に入ったな」
「ああ・・・」
クロロがそう言う中、ヒロは先程の感覚が身体中から離れなかった。
まるでデジャヴにも似た感覚を覚えたのだが、どうしても思い出せない。
ヒロは幻影旅団と関わる前の記憶が曖昧だった。
正直、クロロと出会った時の状況さえわからない。
(まぁ・・・今に始まったことじゃないけれど)
このことはクロロを始め、ほとんどの団員が知っていることだ。
気にしたところで今までと何ら変わりはしないだろう。
そう言い聞かせて、ヒロは皆がいるであろう広場へと足を進めた。