第5章 犬愛 <セカンドバージン 子犬系男子>
「でも···」
わしゃっ。 「!」
小村は、私の頭皮と切られた髪の間に優しく指を入れた。
「嬉しかったんです···ッ、こんな駄目な僕にッチョコ
レートを下さった事········ッ」
ぎゅっ。 「ちょっ··!」 ポタッ、ポタポタッ
小村が私のことを後ろから抱きしめてきた。
「っはッ··!ごごごめんなさいッ···!!」
バスルームの温度のせいか、ガラスに写った子犬
はいつもより顔が赤かった。 湯気のせいで湿度
が高くなって曇っているのに分かる位に。
まるで雲の中にいるようにぼやけて、白っぽい空気のなかで何故か小村の顔全体の色だけがくっきりと見えた。
わしゃっ、わしゃっ、わしゃっ、······
シャンプーで髪を洗う音だけが鳴り響くなか、私の
上唇は、下唇からどんどん離れていた。
「····やっぱイラつくわ、あんた」 ポチャッ。
お湯の跳ねる音がした。 今私が言ったことに、
疑問を問いかけるように。
ーーーーーーーアツくて、口の周りの筋肉がーー
しまった、とも何とも思わなかった。 お風呂独特
の、よく分からない、頭がモヤッとして眠気と似た
ようなマッサージをしてもらっている時のような、
何かうっとりとしたモノが私の脳の大部分を支配し
ていたからだ。
それに····· 虚ろになっていく瞳で思った。
小村の指が頭に優しい刺激を与え、指が私の頭に触れる時の少しの緊張感が心地よさを増していた。
「···さっき瑠々さんに触れてしまいッ、本当に申し訳ありませんでした········ッッ!
以後、触れません。」
「は」
小村がそれを言った瞬間、ボンヤリ頭がスッキリして、脳が体に衝撃を伝えた。