第2章 同愛 <学生 百合 純愛 少し·····>連載中
ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ...
これ何の音だ?
といっても、私が階段を登り切った後の息切れなので、クイズにもならなかった。
「ごめんなさいね..瑠々..」
しゅんとしたような声。私は潤った目を見開き、そして無視してしまった。多分、彼女を無視してしまった恐怖は後からジワジワとくるであろう。今は、体力の消耗で気が散っている。
あの後、螺園ちゃんと目が合い、なぜか意地になって車椅子ごと彼女を自分ちにおしこんだ。
よく階段中一度も車椅子を腕から離さなかった。と、彼女は間違っても落としちゃいけない人物だって、わずかに恐怖も訪れていた。まだ私は肩を動かし酸素を急激に求めている。
「さ..入って....」
強めの言い方になってしまったのは、何故か。
「お邪魔するわね...」
恐る恐る、彼女から私の部屋の中に入ってゆく。ーーー自分の部屋をこういう風に表現するのはどうかとも思うが、宝の山々がある部屋にもったいぶって入ってるような、そんな車椅子の動かし方だった。
「わぁっ...!」
わぁっ..!って言うだろうな、と思ったら、彼女はホントに言ってくれた。なんとなく、彼女のことが分かってきていたのだ。
「あっ、いやごめんなさい...」
ぱぱっ!と私の顔を見上げてお茶目に手を口に当てる螺園ちゃんは、やはり可愛らしかった。....ずるい、きゅんとしちゃう。かわいいじゃない...っ。
私の部屋は誰か急にきて焦るような汚さでもないし、だからと言って自信満々に見せられるようなオシャレさも無かった。
ところで、あのやるせないような暗い気持ちは、どこへ行ったのか。
..私はまだ螺園ちゃんが怖い。
私の迷惑にならないように、入り口を避け器用に部屋の中に収まった螺園ちゃんは、少しそわそわし始める。
.....わかっている。
自分は予防線を張っているのだって。
螺園ちゃんがまさか、....私の事本気で好きなわけないって。それで私が勘違いして熱烈に好意を表したら、
『何勘違いしてんの?ダッサ』
ってなるのが恥ずかしい。
ただ、それだけ。気持ちを分解してみたら、彼女にいじめられていたという過去の事実が、私の足を引っ張っているだけなのだ。
ーーーーーでも、ここで簡単に許していいの?
許して、また傷ついたら、私が損をするだけじゃない。
『ああんっ..♡』