第2章 同愛 <学生 百合 純愛 少し·····>連載中
「あっ..」
一瞬、彼女のその無垢な上品さに呑まれながら、私は抵抗しようとした。彼女が自分の家に入ってくることを。
「あれ?というか、あなた車椅子なんだ」
「!」
お母さんが言ってからそれに気づいたのだが、ばか、なんでそういう事ハッキリと伝えるのよ、と責めるようにお母さんの腕を掴んだ。
「あ...そうです、ね...」
と、螺園ちゃんは自分の足元を見る。彼女もどう我が家に入ろうか考えあぐねているようだ。表情が曇っている。
「ーーーっ」
最初、早く私の家から帰ってもらおうと思っていたけど、今でも98%くらいでは拒否しているけど、今ここで今帰って下さいといったら最低になってしまう。
特に、私と螺園ちゃんの関係を知らないお母さんは、そう思うかもしれない。
「うーん、ちょっと待ってなさい、螺園ちゃんは!」
お母さんはそう言うと、目にも止まらぬ早さで廊下を突っ切っていった。今のはあくまで比喩だから、本当は急に主婦の片鱗を見せて来たお母さんの姿はまじまじと見ていた訳だけど。
そんな事はどうでもいい。ポツンと、車椅子の螺園ちゃんと私は玄関に取り残されてしまった。
「......」
何も言えずに螺園ちゃんからそっぽを向いていた。自分でも、螺園ちゃんは今お客さまなのに大人気ないな、と思いつつ、そこは意地で通した。
「瑠々.....」
やめて。
私は、心の中で、ぽそりと声をあげた。
そんな、貴女に虐められていた時みたいな声のトーンなのに、どこか甘ったるくって。
そういう風に思うのは、あの、ホテルの中での夜の出来事があったから当たり前の感情で。
「ーーー...」
螺園ちゃんも、何をいっていいか分からず、というか、何から先に話せばいいのか分からずといったところだろうか、不機嫌そうな顔で焦り始めた。
ーーー私はずっと、貴女のその顔に怯えて生きてきた。
やられた側はちゃあんと覚えていて。
いつまでも、切ないような苦しいような、誰かを呪いたいようなやるせなく暗い気持ちになる時もある。
ーーーーさっきは一瞬、ほんとに一瞬うれしかったけれど、でも..
もしかしたら、ここまで追いかけて来て、また、何か私にいじわるするのではないか、と、とても不快な気分になってきていた...。
「螺園ちゃん、今日は家に泊まっていきなさい!」