第2章 同愛 <学生 百合 純愛 少し·····>連載中
「..」
ーーいや、そんな事あるわけない。執事が、..私が本気でここを抜け出そうとしてる事を知っているなんて。
「....家族と何かなんて比べられないわ」
私は車椅子の上で呟いた。
「でも、それを捨てなきゃいけないくらい、大事なものができただけよ」
私は、はっきりと伝えた。
それは勿論、瑠々ーーーー..。
瑠々の満面の笑顔が、脳裏に浮かんできた。
「ーーーー。」
「..私は結局ワガママ娘なのよ」
割と思ってもない事を執事に言ってみた。でも、そう言わなきゃ許されない気がしたから。
「お嬢様、お嬢様は比べられないと仰っていますが、結局お餅の方が大事なのですよ。」
「まぁ..そういう事かもね..ってコレ、絶対お父様には言わないでね」
「畏まりました。しかし、主人様であるお父様に聞かれたらお答えしますが」
「意味ないじゃない」
はぁ..とため息をついた。..執事は、仕事をこなすだけの人生、本当に楽しいのかしら。
「では、お嬢様。」
え、と息をのむ間もなく、ドアが開かれた。ーーーそこには、我が屋敷の、よく手入れが行き渡った豊かな緑の庭。
「...どういう事?「外出なさりたいのでしょう?」
執事はずっと無表情。
「...そう」
私は、ニヤリと笑ってしまった。..この執事は、稀に、こういう間違いを犯す。本気の、天然が入ってしまう。
それくらい長い付き合いだから、分かる。
あーーー
「いや、でも、お父様に報告しなくてはっ..」
「お嬢様、"ただ"外出されるだけなのに、なぜお父様に報告がいるのです?」
私の意図を全て読んでいるような問いをする執事を、私は振り返った。
「でっ..でも!言わなきゃいけない事が「いいえ行ってください、ただの外出だというのなら、そうしなさい」
「!」
執事の表情は、いつもと変わらず真剣そのものだった。「いやでもッ...「いいから行きなさい。」
「....。
分かったわ...」
私は颯爽と駆け出した。車椅子で。
「..お嬢様は、私の理解者ではない。本当に、酷い、お方だ...。」
"防犯"カメラの映像に、細工をしかけておかなければ。
「 叶わぬ恋は、私とあなたの婚約者様だけでいいでしょう..? 」
胸ポケットの中に仕舞った螺園の写真を、ギュッと握りしめた。