第2章 同愛 <学生 百合 純愛 少し·····>連載中
「逃げろって、は...っ?」
「シッ、静かに!!」
普通の声で喋ってしまった私の口を、フィアンセは押さえる。
「...」
ジーッ、とカメラの音が鳴る。
「..フゥーッ、良かった、聞こえてないみたいや」
「...ん、ごめんなさい..」
と、フィアンセは、私の、お人形さんのような白い白いドレスの肩を掴んだ。
「...ボクも好きな人がいてな、」
「っ..!」
今度は声を押さえる。「フィアンセ、それは嘘ッ..!「いいや嘘じゃないって。ほんまに。だから..」
ここで、エセ関西弁フィアンセは私を抱きしめた。強く強く。
白く、繊細なドレスの生地が、宙にフワッと広がってゆく。首の根元で、息苦そうに、フィアンセが囁く。
「.....お前を失いひんたくなかったほんまや、ほんまに...
美しい螺園を手放すのはほんまに惜しいと思ったる。
...なぁ、来世では結婚しよな?
地獄のドン底まで、お前を待ってるで..」
そして、フィアンセは私を車いすの上に乗せた。...嗚呼、なんて可愛い椅子...。私のためだけの、車椅子。
なんでって視線を向けたら、すぐに手配させた、とまた視線で返された。
私はこの時、どう頑張っても、このフィアンセとはもう2度と会えなくなる事を悟った。
「ーーーーええ。口説くのだったら、性別を超越してまでしてきなさいよ。」
エセ関西弁言語を喋る陽気な"美少年"は、また、口端を吊り上げるのみだった。"都合の良い"私の答えは、完全なるNOと察したようだ。
「また会いましょう。」
お互い、その次は無い事を知りつつ、引き留めたりしなかった。私は笑みを浮かべながら、一度も振り返りもせず、
「具合が悪くて"腰が砕けてしまった"わ。お手洗いに行ってきます」
大声で宣言した。
それが、別れの合図であった。
「お嬢様」
「なっ..何よ!!」
いきなり、ビックリした..!あの、冷徹な執事が廊下に現れたのだ。
「抜け出せるとお思いですか?」
氷のように冷たい瞳は、私を見下す。「えっ...」
まさか、..バレた..!?と思ったけど、違うようだ。
「そんな車椅子で、外出なさる気ですか。お父様がまた怒られますよ。」
と、車椅子をそのまま、執事に押された。
「ちょっと待っ..!」
「お嬢様だったら、お餅を選ばれますか?」