第2章 同愛 <学生 百合 純愛 少し·····>連載中
「私の友人の話なのだけど、」
ピク、とにわかに執事の鼻が動いた。
「ーーその人はお餅が好きらしいわ。でも、家族からお餅を反対されているみたいで」
顔を横に向けたまま、私はスラスラと言葉を流した。
「どうしても、ダメだと言われても、お餅が好きなのよ。でも、お餅を食べてしまったら、自分に何が起きるのかが分かってる」
執事は、肘を90度横に曲げて布団を持ち、話を無表情で聞いていた。
「家族から縁切り、なんてものじゃないわ。それもあるけど、本当はお餅は自分の体にとって良くないって知っているのよ。だから」
だからーー、と言葉を詰まらせた。
「家族を選んだのね。」
執事の反応は読めない。読めないなら、読もうとしたってあまり意味が無い。執事の方に体を傾け、ベッドの布をギュッと握った。
「..お嬢様、」
執事はその冷徹な声色も変えずに、私に囁きかけた。
「婚約者の方が、今来られました。」
「え?」
振り返ると、ーー何故か、私の部屋のドアは開かれて、後ろに美少年風の男の子がそこに立っている。
周りに、ボディーガードと思しき黒いスーツの男たちも並んでいた。
「ほんまおーきに!螺園姫」
ニコッと笑い、『美少年』は首を傾げた。
「エセ関西弁はやめて頂戴、あなた本当に変わってないのね..」
「ほんま綺麗になったなァ..螺園ヒメ。」
私は今、まだ足が動けない。複数人のメイドに着替えさせられた、まるでウェデングドレスのように真っ白なドレス。私は着せ替え人形のようにされるがまま。
「....大方、お父様が心配されて急遽アナタを呼び出したのよね?こんな急に。」
「ほんま綺麗やなァ..早うわしの物になってよ。」
言う事を変えずに、いきなり私の顎を強引にあげた。
「...」
私は無表情で、やや軽蔑した目線をフィアンセに送ってしまった。"美しい"フィアンセの口角が吊り上がる。
「なんもせぇへんて。」
ーーーーいきなり、唇が迫る。
ガッッ!!!..と、私はそいつの頭を鷲掴みにする。
「おーこわ」
「ごめんなさい、私、貴方とは」
自分の冷めた声に驚きつつ、その男の何もかもに憎悪していた。
「ーーーーーーーーー逃げろ。」
「エッ...?」
"防犯カメラ"には残らない小ささで、フィアンセは、そう呟いた。