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ホテルの事情[R18]

第2章 同愛    <学生 百合 純愛  少し·····>連載中



「私の友人の話なのだけど、」

ピク、とにわかに執事の鼻が動いた。

「ーーその人はお餅が好きらしいわ。でも、家族からお餅を反対されているみたいで」

顔を横に向けたまま、私はスラスラと言葉を流した。

「どうしても、ダメだと言われても、お餅が好きなのよ。でも、お餅を食べてしまったら、自分に何が起きるのかが分かってる」

執事は、肘を90度横に曲げて布団を持ち、話を無表情で聞いていた。

「家族から縁切り、なんてものじゃないわ。それもあるけど、本当はお餅は自分の体にとって良くないって知っているのよ。だから」

だからーー、と言葉を詰まらせた。

「家族を選んだのね。」

執事の反応は読めない。読めないなら、読もうとしたってあまり意味が無い。執事の方に体を傾け、ベッドの布をギュッと握った。

「..お嬢様、」

執事はその冷徹な声色も変えずに、私に囁きかけた。

「婚約者の方が、今来られました。」

「え?」

振り返ると、ーー何故か、私の部屋のドアは開かれて、後ろに美少年風の男の子がそこに立っている。

周りに、ボディーガードと思しき黒いスーツの男たちも並んでいた。

「ほんまおーきに!螺園姫」

ニコッと笑い、『美少年』は首を傾げた。








「エセ関西弁はやめて頂戴、あなた本当に変わってないのね..」

「ほんま綺麗になったなァ..螺園ヒメ。」

私は今、まだ足が動けない。複数人のメイドに着替えさせられた、まるでウェデングドレスのように真っ白なドレス。私は着せ替え人形のようにされるがまま。

「....大方、お父様が心配されて急遽アナタを呼び出したのよね?こんな急に。」

「ほんま綺麗やなァ..早うわしの物になってよ。」

言う事を変えずに、いきなり私の顎を強引にあげた。

「...」

私は無表情で、やや軽蔑した目線をフィアンセに送ってしまった。"美しい"フィアンセの口角が吊り上がる。

「なんもせぇへんて。」

ーーーーいきなり、唇が迫る。

ガッッ!!!..と、私はそいつの頭を鷲掴みにする。

「おーこわ」

「ごめんなさい、私、貴方とは」

自分の冷めた声に驚きつつ、その男の何もかもに憎悪していた。

「ーーーーーーーーー逃げろ。」

「エッ...?」

"防犯カメラ"には残らない小ささで、フィアンセは、そう呟いた。


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