第7章 同愛 2 <学生 やおい 純愛 短編>
「...」
瑞木。瑞木瑞木。
「あ...」
その時、瑞木は何か言っていただろうか、分からない、頭がボーッとする。見開き剥いた目が閉じれない。
"瑞木.......。"
何度もそこにいる相手の名前を繰り返した。多分、ーー脳内で。
小学生の頃から、たくさんの木々がある校庭でおっきな笑顔を向けてくれた、小学生の時の瑞木。走馬灯のように、瑞木の幼き姿と共に思い出が流れた。
瑞木の姿が大きくなって今の高校生の姿になった刹那、瞬き2回している間に完全に我に帰った。
「あ..ーーー」
トイレのたった狭い個室周辺に起きた出来事で、俺はその時何かを悟ったのだろう。
瑞木のその顔。なんとも言えないその顔は、言葉にすれば真剣な眼差し、といったところだろうか。
悟った事は、俺にとって世界がひっくり返る程脅威の事だった。でもその後一瞬で、でもそういうこともある、とほぼ無表情のまま冷静に平常心を保つことにした。俺は、悟ったものに確信というものを覚えた。
そうじゃないと、何か、うまく言えないけど、世界の深淵に落っこちてしまいそうだった。俺は、こういう時冷静でいられるという自信があったけど、いざ起こった時には、すごく心が動揺してしまう。それでも、俺は静かに、自分にも気付かれないくらい小さく、悟った。
だけど、瑞木は、そうじゃなかったらしい。
瑞木に覆い被されるーーと一瞬恐怖したが、瑞木はそのむしろ逆の行動をした。つまり、静止。
「みず..」
瑞木の名前を出そうとするまで、時間はどれくらいあっただろうか。
その後、ハッとしてトイレに行こうと動きだす瑞木を横目に見て、そんなに時間は無かっただろう、と俺は瞬時に推測した。
「あ..」
瑞木がトイレする、と俺は無言でトイレから普通に席を外せるという権利を得て、俺はそれに従った。瑞木はうつむいていた。トイレだとうつむいていても何ら問題はない。
けどーーーー俺たちの間に、何か気まずいものが流れたのは、明らかだった、
瑞木は多分、..俺が瑞木の生脚の画像を見ながら...していた事を、知ったのだろう。
俺が気まずいのを作り出したように思えるが、どうもそうではない。瑞木の方が気まずそうだった。
俺らはその後、どちらかともなく帰っていった。2人とも、無表情な顔つきで別れた。
ーーはず、だった。