第263章 ---.首から落ちた花
「あら、筑前谷はどこへ行ったのかしら」
鉄格子の先にいるその人物に声をかけるものの、応えは返ってこない。
しかし、その先にあるものを見つけ、彼女は小さく悲鳴を吐いた。
「そ、それは……」
上半身のない 男の死体。
臨の目が 悪意の少女へと向けられる。
「ひっ」
そのまま臨は鉄格子へと飛びかかると、ガシャガシャと音を立てて少女へと威嚇した。
「なんですか、驚かせて…出られないんじゃない」
臨が ネジが切れたように動きが止まり崩れ落ちる。
その様子に羽澄は安堵すると、鍵を開け格子の中に入った。
「筑前谷まで殺したのね…私、貴女に個人的な恨みもあるんです。
朽木白哉を誘拐したあの事件、覚えています?」
臨は何も答えない。
しかし それでも構わないとばかりに羽澄は笑みを浮かべたまま 言葉を続けた。
「あの時 貴女に私は父を殺されました。他ならぬ貴女の手によって。首を一太刀で いともたやすく。
目の前の光景が 私には信じられませんでした。それから私は 四大貴族を誘拐した男の娘として 親戚達から疎まれながら生きてきたんです。その気持ちが貴女にはわからないでしょう?
…そんな私に 唯一手を差し伸べてくれたのが、雷門家の当主でした。"鳥居香澄"という人物を尸魂界から抹殺し 私を"雷門羽澄"として育てた。
私は雷門家に、忠誠を誓いました。そして 芭蕉臨へ復讐をしようと 同時に誓ったんです」
臨の頭を 軽く足で小突く。