第263章 ---.首から落ちた花
激痛と共に 重い瞼を持ち上げると、彼女は自分の置かれている状況を思い出し、そっと自身の右目に触れた。
包帯の巻かれたその幹部を、右手でそっと撫でて確かめる。
横たわったその体勢のまま、臨はただ、呆然とした。
(痛い)
そして そっと頭の髪飾りのあった部分に触れると それは付けられたままでホッとする。
(…………仕事、サボってしまったな)
思わず 自嘲する。
これをサボりというのだろうか。
(不幸中の幸いか、失ったのは右目だけか)
激痛ではあるが、耐えれないほどでは無い。
「…………」
体を起き上がらせ、ぐるりと辺りを見回すと、そこは鉄格子がはめられた殺気石の原石に囲まれており その土地の所有者が何者なのか 臨はすぐさま理解した。
(グル だったというわけか)
カランコロンと 何かが近づいてくる音が聞こえる。
霊圧の感じないその空間にいてもなお 何者かかわかるその足音に臨はその人物の名を言い当てた。
「羽澄か」
「正解です。先生」
鉄格子の先に現れた 美しい少女を睨み付ける。
臨が腰の斬魄刀に手をかけようとするものの、空を切るその様子に 羽澄はコロコロと鈴のなるような声で笑った。
「貴女の斬魄刀は 捨ててきました。これで貴女の得意な抜刀術も 鬼道も使用することはできません」
「目的はなんですか……とは 聞きません。地獄の鍵ですね?」
「ええ、まさか持っていないとは思いませんでした。持っていればその場で殺すつもりだったのですが……どこに隠したのでしょうか?」
「答えると思いますか?」
その言葉に 羽澄はそれもそうですねと納得したように頷く。
「なら これならどうでしょうか」