第259章 ---.手を伸ばせども 届かない
「白哉、君も四大貴族ですから既に聞いているかもしれません。上流貴族の一部が ある偉業を成し遂げて 四大貴族もとい 五大貴族に食い込もうとしている輩がいる」
そう告げると、白哉は臨をジッと見つめ 口を開いた。
「……聞いている。恐らくは………」
「桜木、私もそう睨んでいます」
臨が斬魄刀を抜き その柄尻から 赤い紐で封のされた純白の筒を取り出した。
「さて、ここからは私が朽木家に個人的に頼みたいことです」
「それは」
「私が尸魂界より賜っている 宝具です」
無防備に晒されるその宝具を 白哉の前に置く。
宝具という この世界に二つと無いその存在が目の前に 彼は目を大きく見開くと 臨は口を開いた。
「あれが次に狙うのは これです」
そう言って 臨が指先で封印具である赤い紐に触れる。
するとそれは 自然に解け カシュンという音と共にその中身を晒した。
漆黒とも言っていい程の その鍵から 感じる嫌な雰囲気に 白哉の眉間にシワが寄った。
「感じますか?」
「なんだこれは」
「地獄の門の鍵です」
「!!」
「これはまだ断定はできませんが、調査によると桜木が恐らく行おうとしているのは 地獄の門の解錠。どこで入手したのかは不明ですが、地獄の門そのものを出現させる為の詠唱は 既に手に入れたものだと思われます。そこで 次に必要となるのはこの鍵…………」
そう言うと、臨は床に指をつき 深く頭を下げた。
「これを君に預けたい」
「何を」
「頼む」
普段と様子の違う臨に白哉が問いかける。
「何故 」
すると臨は 少し迷ったように視線を揺らした後 直ぐに笑顔を作り答えた。
「敵に錯覚させる為ですよ」
すると これ以上は何も言わないとばかりに視線を鍵へと戻し その筒の蓋を閉じた。
紐が自然に 固く結ばれる。
「とにかく、お願いしますね。それと ルキアには絶対に言わないでくださいよ?」
臨が斬魄刀を腰へと差し直し 立ち上がる。
「それでは また明日。ルキアによろしく言っておいてください」
襖を開くと 既にそこには清家が待機しており、臨はお邪魔しましたと顔に張り付いた笑みを浮かべる。
その作られた笑みに白哉は何かを言いかけるものの、一瞬で消えたその背に目を伏せた。