第258章 423.Bleach My Soul
見慣れている筈なのに 見慣れない静かなその外の光景に 一護は目を細めた。
逆光でよくは見えないが、死覇装の短髪の女性が遠くを見ているのが見え、声をかける。
「臨」
「………おはようございます、一護」
切り揃えられた短い髪が 冷たい風にふわりと浮くその姿に、一護は一瞬黙った後、再び口を開いた。
「髪、切ったんだな」
「護廷のみんなには、散々似合わないと言われました」
少し照れたように 臨が髪の先に触れる。
「そうか?むしろそっちのが、似合うと思うけどな」
「……嬉しいことを言ってくれますね」
再び、沈黙が二人を包む。
すると今度は 臨が一護に声をかけた。
「何を寂しそうな顔をしてるんですか 一護。君に私が見えなくなっても、私やルキアからは一護の寂しそうな顔が見えているんですからね!」
「何だそれ、全然嬉しくねーよ!あと寂しそうなカオもしてねえ!」
臨がくつくつと笑う。それにつられて一護も一瞬笑ってみせるが、臨に告げられたその言葉に 表情を消した。
「お別れですね、一護」
「…………そうみてえだな」
一護が臨の目の前に立つ。
そして一瞬 何かを言おうと悩んだような素振りを見せ、言い淀んだ後 意を決したように臨の目を真っ直ぐ見て 口を開いた。
「……俺、アンタのこと好きだ」
突如告げられたその言葉に、臨の目が大きく見開かれる。
「最初はむしろ、澄ましてていけ好かねーって思ってた。けど 普段は冷静なのにルキアが絡むと熱くなるところとか、仲間を守る為に自分を犠牲にするとことか、普段すげー厳しいくせに時々出る甘さとか、ルキアの白玉を食べたのに食べてないって言い張るとことか
臨の全部が 好きだった」
一護の手が 臨の髪に触れる。
「髪、すげえ似合ってる………………みんなに よろしく伝えといてくれ」
一護の視線の先にいる 臨の姿が薄くなってくる。
「ありがとう」
その言葉は 突如吹いた一陣の風に飛ばされた。