第248章 ⁇?.憧れは 理解に最も遠い感情である

世界は非常に殺伐としていて
非凡で平坦な毎日だった。

隣の国では内乱が起こり
明日食うものも ままならない。

そんな時代に 私は生まれた。






「惣、すまない。すまないねえ」

口減らしに子供を何処かに置き去りにするなんて、よくあることであり わかっていたことだった。
私は体が弱く 将来働けるかもわからない。
心を痛めた部落長が 雨の中 雨の当たらない祠に私を置き去りにしたことが、唯一の彼らの良心だったのだろう。



（寒い お腹はもう空いていない）
喉が 乾いた。
ひたすらに降る雨で 喉を潤そうと口を開ける。
けれど、そんなものただの気休めにしかならなくて。
体に叩き付けられる雨に ただ悪戯に体温を奪わせるだけの行為に 私は膝から崩れ落ちた。
（私は、ここで死ぬんだ）
恨みも怒りも 怒りもない。
ただ 事実に身を委ねた時だった 彼女に出会ったのは。
「強い霊圧を感じてきてみたが、こんな子供とはな」
暖かなその掌が そっと私の頬を撫でる。
「安心して眠れ、今は私が 守ってやるから」
その優しい声が 心に沁みる。
雨で冷たいはずの頬に 暖かな2粒の雨が落ちると 私の意識は闇へと落ちた。