第173章 238.Eagle Without Wings
一護を叩き起こし 説明する間もなく井上宅へと急ぐ。
そこに息をきらしながらたどり着くと ルキアは心配そうな顔で臨を見つめた。
「姉さん……身体はもう」
「霊波障害除去は?」
「完了した様です」
日番谷の言葉に遮られ 臨が前を見なさいとルキアに小さく告げる。
「繋いでくれ」
日番谷がそう言うと 画面には浮竹の姿が現れ 一同は驚いた。
「!?浮竹……?総隊長じゃねえのか?」
『代わって頂いた』
「理由は?」
日番谷の問いに 浮竹は一瞬口を噤むも 臨は一歩前に出ると渋々告げた。
『……井上織姫が現世に向かう穿界門に入る時 最後に見届けたのが俺だからだ』
臨の目が大きく見開かれる。
『その反応をみると やはり彼女はそちらには到着していないようだな……』
「どういうことですか浮竹隊長…織姫ちゃんが消えたとわかったということは 尸魂界側では何かわかっているんでしょう?」
『……こちらの見解を言おう………穿界門通過の際に彼女につけた護衛二人が生存して戻った。彼等二人の話によればーー井上織姫は破面側に拉致 若しくは 既に殺害されたものと思われる』
「おま……ふざけんなよ浮竹!!」
画面に向かい 臨が殴りかかろうとするのを日番谷が止める。
『解ってる 俺だってこんなことは言いたくない 可能性の話をしているんだ!情報によれば彼女は破面の襲撃を受け その後破面と共に姿を消したーー』
「証拠も無いのに死んだと言っているのか!昨日の報告でお前らは知っている筈だ!私は昨日の戦いで死にかけた!現世側では誰も治せなかった傷だ!!それが朝起きたら跡形も無く治っていた しかも井上織姫の霊圧を残してだ!これでもまだ死んでるって……!」
『らしくないぞ 芭蕉臨』
その声に 臨の目が見開かれる。
「そう………たいちょうっ」
『今の話でなんとなく解っては居るのだろう。もし拉致をされたなら 去り際におぬしに会う余裕などあるまい 死んでおらぬということは 井上織姫は自らの足で破面の許へ向かったということじゃ』
「っーーーーーーー!!ちがっ」
「姉さん!」
ルキアの声に 臨の頭が急激に冷静になっていく。
煮え繰り返る腹わたをなんとか鎮め 臨は少し息を吐くと 今度は真っ直ぐ元柳斎を見つめ 告げた。