第172章 237.goodbye, halcyon days.
静かな室内 窓は閉じられている筈なのに ゆっくりとカーテンが揺らめくと その人物は現れ 臨と 臨のお腹の上で寝ている一護の前に立った。
「よい……しょっ……と」
飴色の髪が さらりと二人に落ちる。
そして臨と一護をみると 照れたように頭をかいた。
「え……えへへ…来ちゃった」
井上織姫は室内を見回し ルキアはいないのかと驚く。
「………ほんとはね たつきちゃんとか 茶渡くんとか 石田くんとか 朽木さんとか………お別れ言いたい人はいっぱいいたんだけど………って 二人に言うことになっちゃうけど 仕方ないよね!うん 二人が一緒にいるんだもん!………二人……が…」
織姫が 泣きそうな顔で俯く。
「………ううんっ別にやましいことがあって二人で黒崎くんの部屋にいたんじゃないんだし!……黒崎くんの……へ……や……………」
ゆるりと辺りを見回す。
(そういえば……あたし 黒崎くんの部屋に入るの初めてだ………
…黒崎くんの……においがする……)
そっとしゃがみこみ 一護の顔を覗き込む。
よく寝ていて起きそうにない そう思うと 織姫はそっと一護の手を握り 顔を近づけた。
月明かりが 優しく部屋照らす。
どれほどの時間が流れたのだろう 織姫は動きを止めると ポロポロとその目から涙を零した。
「………ダメだ…やっぱりできないや………」
セーターで涙を拭き取り 背筋をしゃんと伸ばす。
「………ダメだねあたし………最後なのに……臨ちゃんの前でこんなことして…………」