第157章 0.side-A the sand
「……ああ ホントに来てくれたのかい 兄ちゃん」
足の見えない 老父が オレンジの頭を見つめる
「スマンね あの子 消えちまった」
「………ああ」
俺は 霊が見える
こいつらに 触れる
こいつらと 言葉を交わせる
ただ それだけだ
「……ムダに なっちまったなあ その飛行機」
彼はそれでも その場に飛行機のおもちゃを置いた。
「いーって どうせ ウチの押し入れにあったモンだ」
こいつらは時々 こうして消える
どうして消えるのかはわからない
時折 その場に残るのは
俺だけに見える血の跡と
痛みに似た感情
いくら体を鍛えても
こいつらのことは護れない
「………仕方ねえさ」
それを思うとき
俺の心は 刃に似るんだ