第107章 145.Shaken
「どないしたん?」
市丸の言葉に我にかえる
「急に、えらいぼーっとして」
「………いえ……」
すると彼はそういえばと遠くを見つめた
「死んでへんみたいやねぇ、阿散井クン」
「……な……まさか!」
気を集中させ、魄動を見つけ出す
弱々しい 魄動
けれどこのままでは
「死ぬやろね 直ぐ」
その言葉にルキアは市丸を睨みつける
「可哀想やなァ阿散井クン……ルキアちゃんを助けようとしたばっかりに……」
「!?莫迦な……!適当なことを言うな!!何故恋次が私を……」
「怖い?」
その言葉の意味がわからず思わず黙る
「死なせたないやろ、阿散井クンも他の皆んなも。死なせたない人おると、急に死ぬん怖なるやろ?」
「………………!!!」
「…………助けたろか?」
その言葉に連行人達の間に動揺が走る。
「どうや?ボクがその気になったら今スグにでも助け出せるで。キミも 阿散井クンも それ以外も」
何を言っているのか理解できない
正気だとも思えない
けれど
それとも本当にーーー
そう思った瞬間、市丸はルキアの頭にポンと手を置き、残酷な一言をつぶやいた
「嘘」
ヒラヒラと目の前の男が手を振る
「バイバイ ルキアちゃん。次は双殛で会お」
希望は捨てた筈だった
生きる理由も失った筈だった
未練など無い
死ぬことなど
恐ろしくは無いと
揺るがされた
希望に似たものをほんのわずかちらつかされただけで
こんなにも容易く
生きたいと 思わされてしまった
覚悟を
崩されてしまった
双殛の台へとルキアが立たされる
「……それではこれよりーーー
術式を 開始する」