第107章 145.Shaken
この男が 嫌いだった
私が護廷十三隊に入隊する少し前に
兄様は六番隊の隊長になった
それと時期を近くして
三番隊の隊長となったこの男は
私が時折兄様と歩いていると
決まって兄様に声を掛けてきた
傍から見れば
隊長同士の世間話に見えただろう
実際 話の内容など有って無いようなものだった
だが私には
とてもそうはおもえなかった
初めてこの男を見た時
全身から刺すような汗が吹き出したのを憶えている
指先も
口も
僅かな眼の動きさえも
全てが蛇の舌嘗めずりに見えて
話しているのは兄様なのに
常に私の喉元に手をかけられているように思えて
瞼一つさえ動かせなかった
この男が嫌いだった
日常の小さな亀裂を毒気で溶かされ
知らぬ間に病のように
ぬるりと奥底へ入り込まれる
そういう恐怖を
この男に感じていた
理由など無い
最初から
私の中の何かが
この男の総てを
悉く拒絶していたのだ
それは
それから幾度
言葉を交わしても
微塵も薄れることはなく
そして今もーーー