第95章 129.Suspicion
昔の夢を見る
差し出された干し柿に、軽薄な笑みを浮かべた、自分とそんなに変わらなそうな年の少年。
「市丸ギン よろしゅうな」
目が覚めて随分と昔の夢を見たなと思いながら体を起こすと、その部屋にいた人物は彼女へと声をかけた。
「起きたか 松本。」
「………隊長……何してんですあたしの部屋で?」
素っ頓狂なその言葉にその部屋の主、日番谷冬獅郎はバカヤロウと怒り、執務室はお前の部屋じゃねえと言うと書類を彼女に差し出し代われと呟いた。
「俺はもう疲れた。」
「そんなの、隊長が五番隊の引き継ぎ業務全部引き受けてくるからでしょ。」
「うるさい、とっととコレ持って自分の机につけ。」
その言葉に書類を受け取ると、その少なさに乱菊は驚く。
「もうこれだけなんですか!?あんなにあったのに……」
「うるせえっつッてんだ、さっさとやれ!」
そのようすに乱菊は自分がどれ程眠っていたのか理解する。
「……あたし、随分眠ってたみたいですね。」
すると日番谷は構わんと視線を逸らした。
「同期と後輩があんなモメ方すりゃ、お前もそれなりにキツかったろう。」
先程の夢が、乱菊の脳にふとよぎる。
「…….同期……………か………ねえ隊長。隊長は本当に………ギン…市丸隊長のことを………………」
その瞬間、隊首室の扉が叩かれ、日番谷と乱菊を呼ぶ声が聞こえた。
その焦りを含んだ声に日番谷が開けろと声をあげる。
そして扉が開かれると、十番隊第七席の竹添幸吉郎が要件を口にした。
「申し上げます!先程の入った各牢番からの緊急報告でーーーー阿散井副隊長、雛森副隊長、吉良副隊長の三名が、牢から姿を消されたとのことです!!」