第82章 98.星と野良犬
薄れゆく意識の中、走馬燈の如く過去が駆け巡る
南流魂街 78地区 戌吊
流魂街には東西南北それぞれに、1から80の地区がある。
1が一番治安が良くて、78なんてのはまあ最低のさらに下だ。
「まてコラガキどもォ!!」
男が四人の少年達を追いかける。
「そりゃ俺が盗った水だ!!殺すぞ止まりやがれ!!」
必死に逃げる彼らに鎌を振り回す男。黙って走れと幼い俺はみんなに怒号を飛ばしながら走る。
………そういうゴミ溜めみたいな街で、俺達は出会った。
「っまてこのっぼあ!?」
男が転がり、その横に少女が佇む。
「な、何だよあいつ!?知り合いか恋次!?」
「い、いや……」
「ぐ、ぐぞっ!!誰だこら俺の足引っ掛け……」
少女が男のあたまを踏み、その上を何度も潰す。
そうして男の意識がなくなった頃、そいつは俺たちについて来いと指示した。
「ちょ、ちょっとまてよオマエ……」
「早くしろ!手の中の水他の連中に狙われたいのか!?」
そして、その日からルキアは俺たちの中心になった。
ルキアは変わった奴だった。
態度はでかくて、言葉遣いは男みたいで
だけど何をしていても、どこか気品のようなものが漂っていた。
それもそうだ、だってこいつは俺らと出会う前は死神と暮らしていたんだから。
それも物好きな、こんな変なところに住んでいる死神。
こんなクソみてえな場所で、二人はいつも幸せそうだった。
俺達はこの街が大嫌いで、この街の連中も大嫌いで
いつの間にか一緒にいてどんな時も一緒だった。
俺達は家族になった。
ここはクソみてえな連中がクソみてえな生き方してるクソみてえな街で
大人はみんな盗人か人殺し
ガキどもはみんな野良犬
周りはそんな連中ばっかで
そして そんな生活から抜け出すには
手段は一つしかなかった。
「恋次 死神になろう。」
「死神になれば瀞霊廷に住める。そしたら姉さんの負担も減るし、何よりもあの中は住みよい場所だと聞く。」
俺達は皆たった一人で尸魂界へ来て
家族を求めて身を寄せ合った。
この街はそんなガキどもが生きるには少しばかりキツい場所だった
ルキアと臨が俺達の仲間になって10年が経っていた。
仲間は 誰もいなくなっていた。
「ーーーー死神になろう。」