第62章 74.Armlost, Armlost
ぐちゃぐちゃになった泣き顔で一護の肩を掴む。
その姿に一護は若干ひきつつも、振り払うことはできなかった。
「お前どオラは敵同士…….だのにお前えは負げだオラの心配まですてぐれる………でけえっ!!なんて器のでけえできたオトコなんだお前えは!!」
「イヤつーか目の前であんだけ泣かれたらなぐさめざるをえないっつーか……」
「それにひぎがえ何だオラは…….斧が折れだぐれえでベソベソすで…….男とすでなさげねえだ!!」
兕丹坊は手の甲で涙を拭うと、両手を広げ万歳した。
「完敗だっ!!オラは戦士とすでも、男とすでもお前えに完敗だ!!!」
すると彼は、一護を真っ直ぐ見下ろす。
「通れ!白道門の通行を兕丹坊が許可する!!」
そう言うと、一護は驚いた顔をしたあと喜んだ。
「ほ、ホントに僕たちも通っていいのか…….?」
石田がそう問いかけると、兕丹坊はああと元気よく答えた。
「オラはお前たづのリーダーに負げだ!お前たづを止める資格はねえだ!」
「な……黒崎が僕たちのリーダー、だって!?冗談じゃない!」
一護を指差し、大声をあげる。
すると兕丹坊は一護を見て、お前黒崎というのかと問いかけると一護は答えた。
「ああ、黒崎一護ってんだ。」
「いちごか……ずいぶんとまあめんこい名前だなや……」
「うるせえよ!!一等賞の"一"に守護神の"護"だ!めんこくねぇっ!!」
兕丹坊が門へと手をかける。
「気ィつげろや一護………お前えが何のためにごの門をくぐるのが知んねえが……ごん中は強ええ連中ばっかだど!」
「わかってるさ。」
一護が即答する。するとわかってるならいいと彼は門に手をかけた。
重たそうな門が、ゆっくりと上へと上がる。
それに圧巻し、一同は感嘆の声をあげた。
「す、すげえ……!」
「こんなのが持ち上がっちゃうなんて………」
ふと、兕丹坊の様子がおかしいことに気がつく。
「何かあったのか?」
一護がそう問いかけるが、答えない。しかし震えだす彼に一護はただ事じゃないとその視線の先に目を向けると、一人の男が静かに佇んでいた。
「…………誰だ?」
白髪の糸目の男が、軽薄な笑みを浮かべ刀に手をかける。
「さ………三番隊隊長…………市丸ギン……!」
「あァ、こらあかん。」
瞬間 兕丹坊の腕が舞った。
「あかんなぁ、門番は門開けるためにいてんのとちゃうやろ。」