第55章 68-2.SISTER OF FAKE
この話は、100年程昔のお話
南流魂街 第七十八地区 戌吊
一から八十の数字があり、一が一番治安が良くて、八十にもなると地獄よりも酷いなんて言われている。
七十八なんていうとまあ最低よりさらに下。地獄とあまり変わらぬその街に、私の家はあった。
まさにあばら家、しかし住んでみると意外にも悪くない。
多少襲いかかってくる住人達もいるが、それはまあいつものこと。特に変わった出来事もなく、今日も戌吊へ帰ろうかと歩をすすめると1組の姉妹が賊共に囲まれていることにきがついた。
モノハギか、それとも人攫いが目的か
姉は確かにとても美しく、人に売るなら高く売れるだろうと値踏みする。
だがしかし、私とて死神だ、私の目の前で人が襲われそうになっているのを止めないわけにはいかない。
「何をしている!」
「!」
囲まれていた女がこちらを見る。
囲んでいた男達を押し退け、その女の前に立つと彼女は安心したかのように肩の力を抜いた。
「全く、こんな幼い女の子を寄ってたかって……少しは恥を……」
「ごめんなさい!!」
「あっ?」
少女に視線を向けた途端、少女が抱えていた赤子がずいと差し出される。
つい反射的にその赤子を受け取ると、その少女はそれこそ風のような速さでその場を走り去った。
「え?」
その日、私とルキアは出会ったのだ。