第54章 68.最後の夏休み
黒崎医院 二階
臨は大きな鞄を床へと置き、鞄のジッパーを優しく開く。
するとそこに住む姉妹二人はキラキラと出てくる色とりどりの浴衣を見て目を輝かせた。
「ふわぁかわいい!!」
「すげー奇抜なのもある!なあこれ好きなの貰っていいのか!?」
その言葉に浴衣の持ち主、臨はいいですよと笑い、今度は小さなポーチから髪飾りを取り出す。それに姉妹の遊子は可愛いとそのキラキラと光る髪飾りにこれまた目を輝かせる。
「ほらほら、早く選ばないとお祭り始まっちゃいますよ。」
「じゃああたしこれにする!」
夏梨が千鳥格子の浴衣を掴み、タンクトップの上から羽織る。
それに続いて遊子もじゃあこれと花の模様の入った浴衣を選んだ。
「それとこの髪飾り!」
「あたしは髪はいいやー」
その姿に臨の頬が思わず緩む。
「いいのかよ、浴衣って案外高えんだろ?」
その声に臨は振り向き笑みを作ると、いいんですよと答えた。
「私はもうこの大きさは着れませんし。」
「………まあたしかに。」
明らかに子供サイズの浴衣。それに納得し一護はありがとな言う。
その言葉に臨は微笑んでいると、一護は続けて謝罪の言葉を続けた。
「わりぃな、遊子と夏梨の面倒見て貰って。………親父は朝から見当たんねーし」
「二人とも妹みたいに可愛くて……むしろこんなに可愛い妹を連れ回させて貰って申し訳ないです。」
そう言って臨が二人の頭に手を乗せる。
「さて、一護くん、二人の着付けしちゃいますから出てった出てった。」
八月一日 午後2時半
黒崎医院に楽しそうな声が響き、一護もつられて笑った。