第40章 52.Needless Emmtions
ルキアの目の前に細身の斬魄刀が振り下ろされる。
避けることもできず、ただ通り過ぎる刀身。
「尸魂界からの追っ手が背後から迫ってるってのに考え事に夢中で声かけられるまで気づかねえってか?いくら義骸の身とはいえ、二月三月でちいっとユルみ過ぎじゃねぇか!?」
ずるりと刀がコンクリートの地面から抜かれる。
阿散井恋次と呼ばれたその男は、峰を肩にかけると首を鳴らし口を開いた。
「吐けよルキア、てめーの能力を奪った人間はどこにいる?」
ルキアの声が震える
「何を、言っておるのだ?義骸に入っておるからといって力を奪われたとは限らぬし、ましてその力を奪った相手が人間だなどと……」
「人間だよ!!」
ルキアの肩がびくりと震える。
「でなきゃてめーがそんな人間みてーな表情してる筈が無え!俺と同じ流魂街の出でありながら大貴族の朽木家に拾われ、死神としての英才教育を施された朽木ルキアともあろう者がァ!そんな人間みてーな表情してていい筈が無えんだよ!!」
なァ!朽木隊長!!
唐突に現れた霊圧
驚いてルキアは振り向くと、その人物はただ静かにルキアを見下ろしていた。
「ーーーーー白哉……兄様ーーーーー………!」
「…ルキア………」
気をとられる、しかし背後から迫る凶刃に気がつくと、彼女はすんでのところでかわした。
恋次が言葉を続ける。
「"人間への死神能力の譲渡"は重罪だぜ、その処刑を刑軍どもじゃなくオレ達に任せたのは上なりの優しさだろうよ。さァ、居所を吐けよルキア、オレ達はてめーを捕え、てめーから力を奪った奴を殺す。……庇いだてするなよ、わかってんだろ、さっきのも今のも、躱したんじゃない、躱させてやったんだ………次は斬るぜ。」
恋次が刀を大きく振り上げる。
直後、恋次の目の前を何かが通り過ぎた。
「………!!」
「丸腰の女の子相手に武器を持った男が二人がかり、見ててあまり気持ちのいいもんじゃないね……僕はあまりすきじゃないな、そういうの。」
その声に恋次が視線を向ける。視線の先には霊子で出来た弓を片手に佇む男……石田雨竜が立っていた。
「……何者だてめぇ……!?」
「………ただのクラスメイトだよ、死神嫌いのね。」