第33章 45.ポイント・オブ・パーパス
井上織姫は戸惑っていた。
自身に唐突に与えられた能力、唐突に現れた 虚 と呼ばれる化け物。
意識を失い、目が覚めると別の場所で帽子を被った男性に言われた言葉、全てに戸惑っていた。
それは隣にいるクラスメイトの茶渡も同じようで
「黒崎くんと接触して……あたし達の能力が引きずり出された………?」
脳が理解に追いつかない。いったいこの人は何を言っているのだろうかと思っていると、再び浦原の口が開く。
「理解できてないって顔っスね。」
織姫の言葉が詰まる。
「わからなくて結構、……まあキミ達の変化は病に罹ったワケじゃない。ただ、目の前に現れた扉の鍵を渡されただけなんスよ。原因を知る必要もなければ、我が身の不幸を嘆く必要もない。手にした鍵で目の前の扉を開くも閉ざすもキミ達次第。」
開いたならその奥に、足を踏み入れるかどうかもね。
その言葉に織姫と茶渡が俯く。
直後、ガラリと開いた襖に握菱鉄裁が現れ、空紋が収斂を始めたことを伝えた。
2人にはなにが起きているのかわからない、でも、何かが起きていることだけはわかる。
すると浦原は見計らったように「ついてきますか?」と一言聞いて、羽織を翻した。