第356章 epilogue.1 葬神天滅
巨大な髑髏が 私を見る。
それに気がつくと、私は彼の名を呼んだ。
「皇骸浅打ーーーーー……いや、違うな。
こう呼ぶのが正解か
霊王よ」
その言葉に 髑髏が骸骨が敷き詰められた地面へと身体を崩した。
その中から まだ若い少年が私をその瑠璃の瞳で私を見つめる。
「おかえり、葬神天滅」
「ただいま」
敷き詰められた骸骨達が一瞬で霧散し 澄んだ水面と群青の空が空間を満たす。
霊王は私にそっと近付くと その冷たい手で私の頬に触れた。
「やっと、気付いてくれたんだね」
「やっと、気付いてやれたんだ」
その手の上に 自身の手を重ねる。
すると、霊王はそっと私に笑みを見せ、その身体を霊子と分解させた。
「ねえ、気付いているかい葬神。僕は君を 愛していたんだ」
「……知っているさ。だから私には理解できなかった。お前を殺させたお前自身を許せなかった。
私も愛していたのに。何故と」
「葬神よ、君は知らないだろう。
愛とは不変のものではない」
霊王が告げる。
「僕はどうしても、世界を守る為の楔にならなければいけなかった。
他の者に代理は務まらない。僕自身が、楔になるしかなかった。
その為には 君を手放すしかなかったんだ」
男が そっと息を吸う。
「僕は君に 呪いをかけた。
愛するものを己の手で殺したという 呪い。
それで僕は 君の永遠の記憶に残り、君の全てを支配しようとしていたんだ」
「そんな馬鹿な理由でお前は……」
「ああ。自分でも馬鹿な理由だったと思ったよ。そして馬鹿みたいに君に固着して、君に執着して地獄にまで送り込んで僕を恨ませた。憎ませた。
結果、君は僕の残した子達にいいように使われ、君の記憶さえも奪われた。
僕はそれが許せなかったんだ。だから 死神を滅ぼすことに決めた。君の記憶を奪ったのが許せなくて
僕は 僕に残った僅かな力で、君に最も近い皇骸浅打という斬魄刀に成り代わったんだ」
その言葉のあと 私はそっと霊子へと還る霊王へと腕を伸ばし その頭を抱きしめた。