第334章 ???.君が嫌ったこの世界で、君と出会えてよかった。
それは 死神統学院の入学式のことだった。
夜空の如き濡れ烏の髪
海を映したような瑠璃の瞳。
「新入生代表 浮竹十四郎」
「はい」
壇上から見える 千人を超えた学友達の中で ただ一人 視線を奪われた。
どこかで 会ったことがあるのかもしれない。
懐かしさが俺を包むと 彼女は俺から目を逸らした。
「何を読んでいるんだい?」
初めて言葉を交わしたのは、入学して一月程過ぎた頃のことだ。
彼女の組みは三組 合わせて選択は斬術(ちなみに俺は一組で選択は鬼道)ということで 全く接点の無い俺たちだったが、ある日の昼休み 霊術院の屋根の上で 胡座をかいて本を読む彼女に、俺は初めて声をかけることに成功した。
「………」
彼女は真っ直ぐに俺をその瑠璃色の目で見つめ 作られた笑みを浮かべ簡潔に告げた。
「鬼道の教本」
その時の心臓の高鳴りといったら!
耳になれない女性らしくは無い少し低めの声。
少し離れた距離からでも香る 石鹸とは違う女性らしい甘い香り。
すると彼女は本を閉じて立ち上がり、その屋根から即座に降りた。
それが 最初。