第24章 24.6/17 op.8
パラパラと降り始める雨に、井上織姫はあれ?と声を上げる。それにどうしたのと有沢竜貴が言うと、雨降ってきたと織姫は答えた。
「ウッソ!?昼間あんだけ晴れてたのに!?……ホントだあ」
窓の外を見てそう言うと、織姫はたつきに傘を貸してもらえるようお願いした。
「いいけど、泊まってけば?あの家雨降ると寒いっしょ?穴ちゃんと塞がってないから。」
「あ、あそこ追い出されたの。」
直後、たつきが悲鳴をあげた。
「追い出されたあ!?なにそれ初耳だよ!じゃあ、あんた、今どこ住んでんの!?」
途端にカバンから出される寝袋。
「野宿っすか!?」
そしてそのまま織姫が裏側の柄の部分を見せる。
「しかもリバーシブルーーーって別に寝袋がリバーシブルでも全然お得でも何でもないよっ!そんなリバーシブルだから2倍よく眠れますみたいなカオされても!!」
「なんつって♡追い出されたのはホントだけど新居見つけるまではホテル暮らしなのでしたー♡」
そう言う織姫にたつきがほっと胸をなでおろす。
「なんだ、びっくりさせないでよ……ていうかあんた、そんなしょうもないネタのために寝袋持ち歩いてたの?」
とたんに織姫の目が冷める。
「ええ、どうせしょーもないネタですよ……あたしもね、寝袋持ち歩き始めて一週間くらいで あ、こりゃダメかも とは思ったんすよ……………まあ実際たつきちゃんのツッコミのテンションの割に全然おもしろくなんなかったしね」
「い、いや!大丈夫よ織姫!ちゃんと面白かったって!ていうかその"あたしのツッコミのせいでおもしろくかなかった"みたいな言い方やめてくれる!?」
サラサラと雨がふる
その様子にたつきが本当にいいのと聞くと、織姫はいいのと答えた。
「制服だって持ってきてないし、それに今日はなんだか歩きたいきぶんだし!!」
「………そっか、それじゃね。」
「うん」
お母さんが死んだの、あいつが9歳ん時にね。
(あたしが、理由もなく感じてた安心感………………優しさに似たもの、一方的なシンパシー)
「そのわけが、少しだけわかった気がするよ………………黒崎くん。」