第10章 憂鬱の雨
『ありがとうございました』
僅かな記憶を取り戻したというか、見たということを報告して睡眠や食事のこと、友人関係のことなど色々聞かれた
さっきのことから不安はだいぶ取れたので割と清々しい気分でいたのだが、ぼーっとしていたらしく購買にきていた
お昼まだだし何か買うかと考えていると、声が掛かる
「どうしたんじゃいお嬢さん」
ふっと苗字が顔を横に向けるとにこやな顔をした白髪のおじいちゃんが立っていて、「美人な顔が台無しじゃ」と言って笑った
『いや、なんでもないんです』
「わしは口が堅いんじゃよ」
『…』
「それはさておき、良かったらちょっとゲームに付き合ってくれんかの」
そう言われた苗字は「いいですよ」と快く引き受けると、憩いの場とも言われるコミュニケーションスペースに座った
真向かいの椅子に座ると、目の前に花札を置かれる
「ずいぶんと前に高校生の子と花札をしながら話したんじゃよ
背が大きくてのぉ、すごい良い子じゃった」
『…』
「どんなことで悩んでいるのかの?」
『…彼氏がいるんです、けど』
「コイバナか」
『うーん…そうなんです、かね
もしかしたらその人じゃない人が彼氏かもしれなくて』
「二股か」
『いや…うん、そうなんですかね…本人からは友達って言われてて…』
「本人がそう行っとるんなら友達じゃ、だからセーフじゃよ。月が出たからわし親じゃな」
『はい。でも友達とピアスお揃いにしますかね…』
「悩まなくていいと思うがな」
『えっ』
「それよりも、今の恋人のことを考えてやり幸せにしてあげなさい」
『…たしかに』
緑間君に相談には出来なかったことが、おじいちゃんには相談できた
彼の言っていることはもっともで、脳裏に火神君の笑っている姿が浮ぶ
ああ、なんか今火神君というか、みんなに会いたいなぁ