第9章 お揃いのもの
『すごい…!!』
彼女が今見ているのは海常のバスケの試合。この間見た帝光も誠凛も、決して劣っている訳では無い
しかし、本気の勝負と神奈川代表常連のプライド、他諸々が重なり動き方が今まで見たものの中で格段に良いように見える
点差をどんどん突き放し、しっかりミスをカバーし、勝負は海常がきっと勝つんだなと苗字が悟る。すると頭がチリッと痛み誰かの声がする
"勝負は最後までどうなるかわかりません"
一瞬で終わった頭痛と声に疑問を持ち、周りを見るが連れてきてもらった3人しかいない
はて?と首を傾げたところでちょうどインターバルを告げるブザーが鳴り響く
「とりあえず調子は良さそうで良かったな」
「ああ、今のところ大きなミスもないようだしな」
「あーーなんかオレもバスケしたいっスー!」
「いいぞ黄瀬、外で付き合ってやる。オレが勝ったら可愛い女の子紹介してくれ」
「お前らそういうことは終わってからにしろ」
「笠松は飲み物を買ってきてくれ、頼んだ」
どこから出したのか分からないバスケットボールを持ち、彼らはさっさとどこかに行ってしまう
取り残されたお互いが微妙な空気を悟り、女が苦手であるなりにも笠松が話しかける
「のの、飲み物、一緒に、買いに行くか」
『私残りますよ?』
「ひひひ1人にして、なんかあったら困るだろ!」
対応の違いにクスリと笑みを浮かべ、適切な距離を保ち外の自販機に向かった
何がいいのか教えて貰えなかったが手慣れた笠松は「どうせスポドリだろ」と言ってドンドン買っていく
せめて自分の分くらいお金を出させてくれと彼女が言っても無視し、4人分買い終えた後にも苗字には1本も持たせず来た道を戻り始めてしまう
申し訳ないという気持ちに駆られていると、反対方向から歩いてくる海常のジャージを着た人物とすれ違う
笠松に軽く挨拶して去っていくというごく普通の一連の流れを見た彼女の意識がどこかへと飛んだ