第9章 お揃いのもの
最近学校はどうかとか、当たり障りない会話をしていると会場の高校へと辿り着く
見慣れない学校に苗字がキョロキョロしていると「こっちっスよ」と黄瀬が手を引いていくと、"海常"という大きな文字を背にした青いジャージの人が苗字の目に入る
誰かがこちらに気がついたのか「あっ!」と大きな声を上げると、周りも同じように騒ぎ出す
何をそんなに騒いでいるのだろうと疑問に持つが、答えはすぐに出たようだ
「黄瀬さん!先輩方!来てくれたんですか!」
「久しぶりっスね~!」
「ちゃんと練習してたか?敗退したら覚悟しとけよ」
「女の子のマネージャーは…やはり入らなかったの…か…」
海常の後輩達はどうやら3人の先輩が来たことが嬉しいらしく、ニコニコとこちらによってくる
森山の期待の女の子のマネージャーはいないが、入ったばかりの1年生もどうやらいるようで、彼らは輪には入らず少し離れたところで彼らのことを見て目を輝かせている
その様子を同じように上手く輪に入れない苗字が見ていると、後輩の1人が「あ!聖母さん!」と彼女の近くに寄ってきた
『な、なんでしょう』
「うっわ~ほんとに聖母さん連れてきてくれたんすね!!」
「とーぜんじゃないスか!約束は守る男っスよオレは!」
『…約束?』
「名前っちのこと、試合連れてくーって話したんスよ」
「中学の頃から憧れで、会ってみたかったんです!」
3人を見ていた時の同じ輝いてる目を向けられて、苗字の耳がだんだん赤くなっていく。照れというものだ
上手く面白い返しが思いつかない彼女は「ありがとうございます」とお礼を返すことが出来ないのだが、その返し方がどこか可愛らしくて試合前の緊張を飛ばせるものだったと後に誰かは語る
「じゃ、頑張れよお前ら」
「可愛い子見つけたら応援するからな」
「嬉しくないです」
「森山センパイにもちゃーんと応援させるっスよ!ね、名前っち」
『もちろん。頑張れ!』
そう言って去っていく彼らの背中を見て、数多くいる後輩の誰かが「やっぱカッコイイなぁ…」とポツリと呟く
その呟いた言葉は誰に対してなのか言わずもがな気の利く黄色い髪の男なのだが、1部にはその隣にいる藍色の髪をした彼女のことを見ていたようだった