第7章 帝光へ
凄まじい試合である。鉄壁を誇るの紫原の守りをくぐり抜ける緑間のシュートと黄瀬の動き
しかしくぐり抜けると言っても、稀である。赤司と紫原、高尾のディフェンスはそう甘くない
だがそれは相手にも同じだった。完全無欠の模倣を駆使している黄瀬と、シュートだけでなくディフェンスも得意な緑間によるコンビネーションに、元々運動神経の悪くない苗字の動き
ただ苗字の動きがあの3人に対してでも通じるのか言われたらそれは無理である
「もらったァ!」
『緑間君ごめ…』
「謝ることじゃないのだよ」
高尾に取られたボールを緑間がすぐに取り返し、シュートを撃つ
そんなシュートに見とれていると、迷わずに赤司が紫原にパスを出した
2mを越えた体格とは思えない速度で攻めてくる彼に、苗字が止めに入った
一時的な凌ぎにしかならないそれだが、黄瀬に赤司のマークを外す時間を与えた
「紫原後ろ!」
「遅いっスよ!」
黄瀬の後ろからボールを弾こうとしていた。だがそれを紫原はギリギリで避けた
まるで彼が、誠凛と戦った時のように
だがその避けた方向に、苗字が既に手を出していた
『黄瀬君!』
「ナイス名前っち!」
黄瀬がボールを取りそのまま攻め進み、シュートを決めるかと勝手に思っていた。今度は赤司が彼の前に立ちはだかっていた
序盤にあった時のような駆け引きが再び始まった
お互いゾーンに入っているこの状態、その駆け引きの終わりは、意外なものだった。黄瀬がひょいっと近くにいた苗字に向かってボールを投げたのである
「…おや?」
『え?』
「名前ちゃーん!シュートシュート!」
桃井からの言葉にハッとした彼女はボールをしっかりと持った
彼女が試合でシュートを狙うのは初だった。先程の3on3ではゾーンに入った彼らについていくのが必死だったためシュートを2人に任せっきりだったのである。それは今回も同じ
みなの視線が彼女に集まり、重圧と疲れで心臓が激しく動く。先程試合での緑間のシュートを思い浮かべながら彼女はシュートを撃った
綺麗なループを描く彼女が放ったボールは綺麗にリングを潜った