第7章 帝光へ
誰かに頭を撫でられている感覚がする。懐かしいと思って、無意識に目を細めるとその人が悲しげに笑った
水の中にいるような感覚で誰かがうまく分からないが、落ち着くその声に彼女は微笑を浮かべた
「あ、名前ちゃん起きた?」
『さつき、ちゃん?』
「まったくーみんな名前ちゃんがいるのに本気でやるんだもん!
疲れて倒れちゃっても仕方ないよねー大丈夫?」
『…だ、いじょうぶ』
苗字が上体を起こすと、何かがズボンの上に落ちた。恐らく冷たかったがもうぬるくなってしまったタオルだった
その冷たさを置かれていた場所の熱が奪ったのだろう。おでこに冷たさが残っていた
「あ、名前さん起きたんですか?」
「テツ君!」
「お疲れ様です…流石あの3on3は疲れましたね」
『うん…すごい疲れたけど、楽しかった』
「そうですか」
嬉しそうに微笑む苗字の「楽しかった」という言葉に桃井と黒子も笑みを浮かべる
彼女の性格が、記憶が違っても根は同じなのだ。そう感じた2人のうち、桃井が苗字に抱きついた
「名前ちゃーん!!」
『うわっ…ちょ、倒れる倒れる!』
「危ないですよ」
桃井からの衝撃に倒れそうになるも、黒子からの咄嗟の支えで倒れることはなく、彼女は安堵の溜め息を吐いた
そこに高尾が寄ってきて、苗字に「あんな奴ら相手にして無傷なのがすげーよ」と笑いながら肩をバンバン叩いてきた。むしろ今傷を負いそうである
「でも、名前ちゃんまだもう一試合残ってるっしょ?」
『…え?』
「黒子のチームはもうオレ達とのチームと戦ったし、そっちのチームとも戦ったけど、名前ちゃんのチームはまだ、オレ達のチームと戦ってねぇっしょ?」
『確かに』
あのチームに勝ったんだから一体どんな試合になるのだろうか…と想像した彼女は再びため息を吐きそうになった
だが桃井の「名前ちゃんのこと応援してるね!」という言葉に、力強く頷いた