第7章 帝光へ
「ここが名前ちんが3年生の時の教室だよ~」
「3年生の時はみんな同じクラスだったんだよー!修学旅行も同じ班でね、すごい良いクラスだったんだよねー!」
「灰崎君は別でしたけどね」
『…さぞかし元気があったんだろうなぁ』
想像した言葉をそのまま言ったつもりだったのだが、緑間は「そういうのを五月蝿いというのだよ」とごもっともな意見を入れてきた
否定できないのか、彼女は苦笑いを浮かべてから教室をグルリと見回した。今まで見て回った教室と特に変わりもないそこは彼女の脳に、記憶に何も刺激を与えることはない
「思い出せそうですか?」
『…ううん』
「じゃあ、体育館に行きましょうか」
黒子の意見を聞いて否定するものは居らず、来たばかりにも関わらずぞろぞろと出て行った
その列の真ん中辺りで彼女はのんびりと足を動かし階段を下り始めると、そこに黄瀬が現れた
「もー!みんな遅いっスよ!」
「お前らが先に行っただけだろう」
「部員の子達が早く皆の事見たいって騒いでるんスよーだから呼びに来たっス!」
「青峰は何してんの?」
「青峰っちは説明と1on3してるっス」
「あーアイツらしいわ…」
全然急ぐ様子を見せない彼らに黄瀬は「もー!」と怒りながら苗字の手首を掴み全力ではないが、8割ほどの力で走り出した
彼に疾走に遅れを取るかと思いきや、流石は苗字である。見事黄瀬に追いついていくことが出来ていた
「名前っち、足速いっスね!」
『そう?ありがとう』
「それじゃ、現帝光バスケ部1軍とご対面っス!」
重い扉を開けようと手を掛けた黄瀬の後ろにいる彼女は、自分が受け入れてもらえるか不安に思いながら手を胸元で握った
表情にも出ているその思いは黄瀬も理解したのか「心配しなくても、大丈夫っスよ」と彼女に微笑みかけて、扉にもう一度手を掛けた
「一緒に、開けないっスか?」
『…え、あ』
口を一に結んだ彼女は黄瀬の誘いに乗り、扉に手を添えた。高鳴る動悸が何拍したのか、隣にいる彼の「せーの」の合図で扉を開けた