第46章 白雪姫
何がきっかけで好きになったとか、いつから好きだったとか覚えていない
だが仲良くなったのは、親からそうするように言われたのがきっかけ
一緒にいるようになって澄ました女子や自分に興味のない同級生とも違う大人びた雰囲気に対し、落ち着いているのに落ち着かない様子の彼女を理解するのは難しかった
『汚い手で触んな!』
そう言って飛び蹴りする姿は今もよく思い出せる
助けを呼びに行けばいいのに大の大人を蹴り飛ばし、足を引っ掛けて転ばせる彼女は見ていて口が開いてしまった
その後大人に隠れてこっそり2人で涙したあの日々も覚えているし、一緒にいると楽しくて話も合って、中学も一緒に行きたいと思ったから誘った
『征十郎は、あなたの奥様を忘れる道具じゃないんです!』
ただまさか自分の親と対峙するとは思わなかったし、監督になるなんて思ってもいなかった
近くにいるはずなのに遠い存在の彼女とずっといたかったけれど、高校は一緒に行けないと断られてしまう
だけど別に新幹線を使えば会える距離、そうだと思っていたのに彼女は唐突に目の前から消えてしまった
『好きだよ、征十郎』
軽い力で押されてバランスを崩し、体育館から出る
透けているところは見たことはあったけれどまさか消えるなんて思ってもなく、夢であってほしいと何度も思った
その後も彼女は何度も消えてしまって、知らぬ間に自分も忘れてしまっていて、ようやく一緒に居られると思ったら忘れられ、取り戻せたかと思えば探せと言われてしまう
「これからもオレの隣にいてくれるかい?」
だから当時の中学の違う世界とは言え、そうやって聞いてしまった
ずっとこの時が続いてほしくて、でもそういうわけにもいかないのもわかっている
ただもう2度と自分の前から消えてほしくないと、消えていく彼女を前に腕を伸ばすが届かず空を切った
「名前」
瞼を開けて夢だと気が付く。涙が頬を伝って落ちていき、地面に落ちた