第6章 退院と
苗字と火神がキッチンに行ったことを確認した虹村は先ほどの彼女の話を事細かに説明し、彼らの反応を伺った
どうやら彼らは予想していた事とは違うことからか目を見開いていた
「虹村さん、名前は自分からその話をしたんですか?」
「ああ。少し話してたらな」
「…やっと、理解しました」
「理解?」
「名前は橙崎に。今の家に拾われる前の記憶を持ってないはず…で、勿論知っている事は雪さんから教えられたことだけです」
「赤司、それは」
「今名前は名前が入る前の人格。つまり言ってしまえば、オレ達に出会わなかった時の…本来の名前の人格…ということになります」
「…どういう、意味っスか」
理解していないのか、はたまた理解したくないのか黄瀬は首を傾げ、赤司は彼に「言葉の通りだろう」といつもと何も変わらない表情で言った
事を冷静に説明された黄瀬は他の人達も反論も何もせず、同じようで、目を見開いて口を少し開いていたり、口も目もとじていたりとそれぞれ、ただただ赤司の話を聞いて現実を受け止めようとしていた
そんな彼らの後ろでは苗字が火神と買ってきたスポンジに生クリームをどれだけ綺麗に絞れるかと挑戦をしており、雰囲気が真逆のようだった
そんな彼らを見ながら赤司はゆっくりと目を伏せて、自分に何かを言い聞かせているようだった
「…それって、名前さんが偽物みたいな言い方じゃないですか」
「偽物も本物もないだろ」
そう言った虹村は喉が渇いたのか手元にあったお茶をに飲んでから「どっちも苗字なんだから、同じように接してやれよ」とごく平然と言った
それに彼らは何も反論せず、納得したのか腑に落ちたような表情を見せていた
虹村は彼らを見てそっと微笑みを浮かべ、苗字へと視線を送り、再びお茶を啜った