第6章 退院と
『そう言えば虹村先輩、さっき何言おうとしたんですか?』
なぜかそこそこある距離を歩いて帰ると言い出した苗字に付き合う事を決め、散歩程度に歩いていると唐突に彼女が虹村に問い掛けた
「あ?どれだ?」
『えっと、もしかしてお前…って言ったやつです、けど』
「あー…あれか、そうだな」
そう答えた虹村は顎に手を添えて考え始め、最終的に「いいわ、何でもねぇ」と言って結局何を言いたかったのかをうやむやにした
彼に苗字は何かを探るような目線を送ってから「…そうですか」と答えて、前を向いた
「これから、火神の家でも行くか」
『…火神君の、家?』
「ついでに前言ってたケーキでも作ろうぜ」
『え、でもこれから行ったら迷惑って言うか…みんな忙しいんじゃ』
「いーだろ、お前の退院祝いならアイツら無理矢理時間作ってでも来るだろうし、行こうぜ」
『で、でも火神君の家にいきなり行っても困るだけなんじゃ…』
「アイツの入学式ならもう終わるだろ、タツから時間聞いたし」
タツという新しい人物に苗字はキョトンとした顔をしてから「紫原君の高校の、氷室さん」と言って正解までたどり着いた
虹村はそれを聞いて「おう、正解だ」と笑い、行くことを決定事項にしたようだった
「ケーキ、生クリームとチョコ、どっちにすんだ?」
『えー…と、生クリームにするんで…えっと、泡立てるの面倒だからホイップのやつに』
「買ってくか」
『それじゃあご飯とかも材料買っていきましょ!』
「そうだな」
材料を買っていくことが決まったことに虹村は足をスーパーの方へと進めて行った
火神の家を理解していない苗字は彼の足の向きに合わせて自身の足をゆっくりと進めて行き、不安そうに服をギュッと掴んだ