第38章 存在は
火神の食べる量はやはり凄まじく、周りの人も二度見し、複数の店員さんが気にかけて食べ終えたお皿を下げに来るくらいだった
そのおかげでテーブルは広々使えて良かったとお腹が膨れるくらい食べた苗字が飲み物を飲みながら考えながら彼を見る。食べ終えた皿がまた1つ端に寄せられていった
『お店の中のもの全部食べちゃうかと思った』
「そこまで食わねえよ」
『やろうと思ったら出来るってこと…?』
流石にそれは胃が破裂してしまうのではないかと心配して火神を見るが、彼はそれに気づかず次の食べ物を取りに行く
まだ食べるのかと驚きながら口元を拭いていると、何も持っていない火神が戻って来た
「苗字」
『ん?』
「…アイス食うか」
『何味ある?』
「食うなら色々あるから全部持ってくる」
『…流石火神君』
彼から少しずつ分けてもらえばいいかと待っていると、トレーの上に大量のアイスを乗せた火神が戻ってくる
どれだけ種類があるのか、まるで毎日違う味が楽しめるアイス屋さんのようだと笑いながら空のカップに少しずつ分けてもらって冷たいそれを口に入れた
『あ、あずき美味しい』
「まだ食うなら取っていいぞ」
『他の食べてから考えるよ』
そう言えば昔もこんなことあったなと、場所もメンバーも違うし、自分の記憶でないものを思い出す
あの時食べた時もあずきのアイスだったなと残り2口分しか残っていないそれを口にして、次にピンク色のアイスをスプーンですくった
『火神君食べないの?』
「いや、食う」
『溶けちゃうよ』
そう言うと火神は苗字が掬って残ったアイスを寄せて食べ始める
たくさんの味のアイスを食べ過ぎてどのアイスが1番美味しかったかを覚えてられず、食べ過ぎて身体が冷えてしまいそうだった